トラネキサム酸について
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※保険適用外となります。
※トラネキサム酸250mg :1ケ月分(90錠)2,200円。税込、診察料や処方料込、送料別。
目次
- 1トラネキサム酸とは
- 2トラネキサム酸の作用
2-1 しみ・肝斑の消退
2-2 異常出血や出血傾向の緩和
2-3 湿疹などの皮膚疾患に伴う紅斑、腫脹、痒み、咽頭炎・扁桃炎における咽頭痛や腫脹、発赤、充血の緩和(炎症反応の緩和)
2-4 コラーゲンの分解(光老化)抑制 - 3ピルとの併用は可能
- 4血栓症をお持ちの方への注意点
- 5費用
執筆者 綾瀬皮フ科クリニック 石川智之
1 トラネキサム酸とは

トラネキサム酸は抗プラスミン作用を持つ人工アミノ酸です。1960年に日本人により開発され、1962年に発表されました。
血液凝固作用のある、リジンというアミノ酸の化学構造を元に、出血傾向の治療薬として開発されましたが、その後しみや肝斑を消退させる作用もある事がわかり、今日の美容分野ではメジャーな薬の1つとなっています。
- 保険適用の効果・効能
- 線溶亢進が関係すると考えられる出血、湿疹や蕁麻疹による痒み、咽頭炎や扁桃炎による痛みや腫れ。口内炎。
- 用法・用量
- 1日750〜2,000mgを3〜4回に分けて投与する。
- 併用禁忌
- トロンビン(血栓形成を促進する作用があり、併用により血栓形成傾向が増大する)。
- 併用注意
- ヘモコアグラーゼ、バトロキソビン、凝固因子製剤。
- 副作用
- 人工透析患者において痙攣があらわれることがある。
食欲不振、嘔吐、下痢、胸やけ、かゆみ、眠気。
血中半減期は1〜1.5時間であり、3〜4時間で腎から排泄されます。半減期が短いため、1日3回投与が効果的とされています。
腎機能障害がある場合には血中半減期は長くなります。

2 トラネキサム酸の作用
トラネキサム酸は、プラスミンの作用を阻害することで、薬効を示します。
プラスミンとは、血液中にあるプラスミノーゲンというタンパク質が、組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)という酵素によって活性化されたタンパク質です。
t-PAはケラチノサイト(表皮角化細胞)や血管壁などで分泌されます。
プラスミノーゲンは、肝臓で合成され、血液中を循環しています。
プラスミンは細胞内タンパク質を切断、活性型ホスホリパーゼA2として分離させます。
ホスホリパーゼA2は、生体膜のリン脂質に含まれるアラキドン酸を分離。アラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ(COX)によりプロスタグランジンG2(PGG2)→PGH2と変化します。PGH2は、プロスタグランジンe合成酵素によりPGE2となります。一連の反応をアラキドン酸カスケードと呼びます。
2-1 しみ・肝斑の消退

紫外線その他の刺激がケラチノサイト(表皮角化細胞)に加わると、ケラチノサイトからt-PAやウロキナーゼが分泌されます。前述の反応でプラスミンやプロスタグランジンE2(PGE2)が生成されます。PGE2はチロシナーゼ生成を促進します。チロシナーゼはチロシンからメラニンを合成する作用があります。
メラニンは、紫外線を吸収し組織障害を緩和します。メラニン合成は生体にとって必要な機構ですが、プラスミンによって生成されるPGE2にもプラスミン生成作用があるため、過剰に作られる場合があり、シミや肝斑の原因となります。
トラネキサム酸はプラスミンの産生を抑制しますから、間接的にメラニンの産生を低下させます。
同じくチロシナーゼ産生を阻害するLシステイン、メラニン産生を阻害するビタミンCとともに使用される事が多いです。
また、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MARK)、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERk)1/2などのオートファジー関連タンパクの産生を増加させます。オートファジーとは細胞内の掃除機能で、老化によって低下します。オートファジーでは、メラニンを溜め込むメラノソームも分解されます。トラネキサム酸は、オートファジーを活性化させ、細胞内のメラニンを分解すると考えられています。
2-2 異常出血や出血傾向の緩和
止血の機構として、フィブリンによる止血があります。フィブリンは血液の「のり」であり、出血時には塊を形成し、止血作用を示します。同時に、プラスミノーゲンがフィブリンに結合し、分解を促進します。
トラネキサム酸が無い場合
- 血栓には、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)が結合しやすくなります。
- プラスミノーゲン内のリジン結合部位が、フィブリンのリジンと結合。
- この複合体は、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼにより分解されプラスミンが産生されます。
- プラスミンがフィブリンを分解し、血栓を溶解します。

トラネキサム酸がある場合
- トラネキサム酸は、フィブリン内のリジンという部分に構造が似ているため、プラスミノーゲン内のリジン結合部位と結合します。
- トラネキサム酸が結合したプラスミノーゲンは、フィブリンとは結合できません。
- 血液の「のり」が分解されずに、止血が促進されます。

2-3 湿疹などの皮膚疾患に伴う紅斑、腫脹、痒み、咽頭炎・扁桃炎における咽頭痛や腫脹、発赤、充血の緩和(炎症反応の緩和)
プラスミンは高分子キニノーゲンを分解しブラジキニンを産生します。
ブラジキニンは最強の発痛物質でありかつ、血管透過性亢進作用もあり、組織損傷や炎症での痛み、腫れの原因物質です。
血管透過性は毛細血管血管内皮細胞の収縮により調節されます。血管内皮細胞が収縮すると、細胞間の隙間が広がり、血管内から血管外へ物質が移動します。隙間が狭ければ分子量の小さい血漿成分、広くなれば白血球や赤血球なども血管外へ移動します。
感染症では局所的に炎症→血管透過性亢進が起きて、白血球が血管内から血管外の感染部位へと動員されます。
一方体内では必要以上の炎症反応が起こる事があります。アレルギー反応や、全身性炎症反応症候群です。
全身性炎症反応症候群は、重症感染症や手術、外傷などで、サイトカインが産生され、産生されたサイトカインが次々と連鎖的に炎症を引き起こし、全身的な炎症となる状態です。サイトカインによる全身的な血管拡張が起こり、低血圧(ショック状態)、及び肺水腫等による呼吸不全が起こります。凝固系亢進による多臓器障害、揺り戻し(代償性抗炎症反応症候群)による免疫抑制状態等が現れます。
トラネキサム酸にはこういった過度の炎症反応を抑える作用があります。但し全身性炎症反応症候群では、凝固系が亢進し、血栓ができやすい状態にあるため、通常は使われません。
トラネキサム酸はサイトカインによる炎症反応を抑制すると考えられています。
リンク先の論文では、心臓手術後の炎症反応が、トラネキサム酸によりどう変化するかが書かれています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3206427/#B4
トラネキサム酸は前述のプラスミン産生抑制作用により、間接的にブラジキニン産生を抑制し、炎症反応を緩和します。
ところが臨床的にトラネキサム酸を使用しても、痛みや腫れが完全に消退することは、ほとんどないと感じます。これは、ブラジキニンの主な産生経路が他にもあるからです。プラスミンは線溶系と呼ばれる機構ですが、ブラジキニンの産生にはカリクレイン・キニン系と呼ばれる別の機構も関与しており、そこをトラネキサム酸では阻害できないためです。
2-4 コラーゲンの分解(光老化)抑制
プラスミンはⅣ型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカンといった細胞外マトリックスを、直接分解します。Ⅳ型コラーゲンは、表皮と真皮を隔てる膜です。また、それらの分解酵素(MMP)1および3を活性化し、間接的にもコラーゲンを分解します。MMP1は間質(細胞と細胞の間)コラーゲンを、MMP3は基底膜の構成コラーゲンをそれぞれ分解します。
また、プラスミンによって合成されたPGE2は、コラーゲン合成を抑制します。
この反応は、主に紫外線曝露で起こり、光老化と言われています。トラネキサム酸は、この反応を緩和するとの結果があります。
3 ピルとの併用は可能
トラネキサム酸は、血を固まりやすくするため、血栓をできやすくするピルとは相性が悪いとも考えられています。実際の統計では、トラネキサム酸は単独でも、ピルとの併用でも、血栓のリスクを高めないとされました。特に過多月経の第一選択として、ピルとトラネキサム酸の併用が行われている国もあります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8279901/
(外部リンク 医学文献サイトPubMed)
4 血栓症をお持ちの方への注意点
トラネキサム酸は血栓を安定化させる作用があります。理論上は治療薬に拮抗するため、血栓を治療予定の場合は、しばらく内服を中止する事が推奨されます。
5 費用
保険適用疾患で、トラネキサム酸1ヶ月分(90錠)処方にかかる費用は
・病院にて初診料+処方せん料
・薬局にて調剤技術料+薬学管理料+薬剤料
3割負担で1,600円ほどかかりますが、単独で1ヶ月処方されるケースはほぼありません。
美容目的の場合は自由診療ですので、医療機関により費用はバラバラです。
医療機関によっては、診察料や薬局での費用をゼロとして、保険を使うよりも安くなる所もあります。
当院ではチャット診療を行っております。予約は不要で24時間受け付けております。
※保険適応外となります。
クリニック概要
皮膚科・小児皮膚科・小児科・内科・アレルギー科
綾瀬皮フ科クリニック
〒120-0005
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電話番号:03-3690-0148
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