ヒルドイド(ヘパリン類似物質)について

当院ではヒルドイドのジェネリック(クリーム・ローション)をオンライン診療で処方しております。
予約不要で24時間受け付けております。
※保険適用外となります。

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目次

執筆者 石川智之(綾瀬皮フ科クリニック医師)

1 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)とは

保湿効果のある外用薬は沢山の種類があります。ヒルドイドはその中の一つで、1940年代に販売開始されました。
保湿剤は2つに分類され、皮膚の水分の蒸発を防ぐ作用のあるエモリエントと、皮膚に水分を与える作用のあるモイスチャライザーがあります。軟膏(ワセリン)やオリーブオイルは前者で、ヒルドイドの有効成分であるヘパリン類似物質や、ヒアルロン酸などは後者です。

ヒルドイドの有効成分であるヘパリン類似物質は、ヒアルロン酸やコンドロイチンと同じムコ多糖類で、水分子を引き寄せて保持する作用があります。それをクリームや化粧水などに配合して保湿効果をプラスしています。
さらにはその構造が、肝臓(hepato)で生成されるヘパリンという物質に似ているため、保湿以外の効果も期待される事となりました。

ヘパリンとヘパリン類似物質

2 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)の効果

2-1 保湿作用

ヘパリン類似物質はヒアルロン酸やコンドロイチンと同じムコ多糖類です。水分子を留める働きがあり、外用することで皮膚に浸透し、保湿効果が得られます。

2-2 血流量増加作用

ヘパリンという物質は、血液凝固過程の最終段階を媒介するトロンビンの作用を阻害し、血液を固まりにくくします。ヒルドイドに含まれるヘパリン類似物質も、ヘパリン活性は緩やかながら、血行障害による疼痛を緩和します。凍瘡(しもやけ)や、血腫、血栓による静脈炎にも効果が期待できます。

2-3 抗炎症作用

ヘパリン類似物質は、構造中に陰性荷電のスルホ基(-SO3H)を沢山含みます。
組織傷害性蛋白であるエラスターゼ・活性酸素・好酸球顆粒中のMCP・ECPは陽性荷電を持っていますが、ヘパリン類似物質は強い陰性荷電により陽性荷電を中和し、組織障害を軽減すると言われています。
筋肉痛や、関節炎にも効果が期待できます。

2-4 繊維芽細胞増殖抑制作用

線維芽細胞は、通常時にはコラーゲンやヒアルロン酸を作り出す美肌に欠かせない細胞です。ところが炎症が起きた際には、過剰増殖する事があり、ニキビあとや手術あとの傷跡でコラーゲンが増殖し盛り上がるケロイドという状態を引き起こす事があります。ヘパリン類似物質は、過剰増殖のみを抑制します。
ケロイドや肥厚性瘢痕、瘢痕拘縮や筋性斜頸に効果が期待できます。

3 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)の種類

ヒルドイドにはソフト軟膏、クリーム、ローション、フォームの4つの剤形があり、さらに後発品ではスプレーや泡状スプレーがあります。
それぞれ質感や伸ばしやすさ、保湿効果が違いますので、塗る場所やタイミングに合わせて選ぶとよいでしょう。
ここでは剤形と比較、塗布した画像などを紹介していきます。

比較表

3-1 ヒルドイドソフト軟膏

最もメジャーなタイプで、クリーム状です。
次に書くヒルドイドクリームとの違いは、水で流れにくい事です。
ヒルドイドソフト軟膏は油がメインで、その中に水が含まれている油中水型。ヒルドイドクリームは、水がメインで、その中に油が含まれている水中油型。それにより、流れやすさが異なっています。
油分がメインのため、刺激感は少ないです。

ヒルドイドソフト軟膏

3-2 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)クリーム

始めに販売されたタイプです。クリームタイプのヒルドイドが、1949年にドイツのルイトポルド・ウエルク製薬会社より発売されました。水中油型であり、ソフト軟膏よりは若干伸ばしやすい印象です。
ヒルドイドと後発品はほぼ同じ質感です。

3-3 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)ローション

乳液タイプで、伸ばしやすいです。広範囲に塗る方は使いやすいです。ベタつきにくく汗の多い時期に人気です。
薬剤の形状から、頭にも塗りやすいです。
後発品は、少し化粧水寄りの質感です。

ヒルドイド(ヘパリン類似物質)ローション

3-4 ヒルドイドフォーム

筒状のスプレー缶式であり、プッシュすると泡が出てきます。泡を伸ばすと化粧水状となります。4つの中では一番伸びます。
油分を含まないため、水分の蒸発を防ぐ作用が弱いです。乾燥が強い場合は、塗布回数を多くする必要があります。
患者さんの声として、スプレー缶式なので、捨てる時に少々面倒と言われたことがあります。
高圧ガスを使用した可燃性の製品です。

注意点
  • よく振ってから使う
  • 横向きや逆さまで使用しない
  • 火気の近くで使用しない
  • 火気を使っている部屋で大量に使用しない
  • 高温になると破裂の危険性があるため、直射日光のあたる所や火気等の近くなど、温度が40度以上の所に置かない
  • 火の中に入れない
  • 使い切ってから捨てる
ヒルドイドフォーム

3-5 ヘパリン類似物質外用スプレー

後発品のみ存在します。
筒状の容器で、フタをプッシュすると化粧水状の薬剤がでてきます。アルコール消毒容器のようなイメージです。
伸びは良いです。
噴射する際に拡散しないので、頭に塗りやすいです。
油分を含まないため、水分の蒸発を防ぐ作用が弱いです。乾燥が強い場合は、塗布回数を多くする必要があります。

ヘパリン類似物質外用スプレー

3-6 ヘパリン類似物質外用泡状スプレー

後発品のみ存在します。
筒状あるいはポンプ式スプレー型の容器で、フタをプッシュすると泡状に薬剤が出てきます。ポンプ式でフォームほどのきめ細かさはありません。ポンプ式の石鹸のようなイメージです。
伸ばすと化粧水のようになります。
油分を含まないため、水分の蒸発を防ぐ作用が弱いです。乾燥が強い場合は、塗布回数を多くする必要があります。

ヘパリン類似物質外用泡状スプレー

4 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)の使い方

一日数回、塗擦(塗りこむ)か、ガーゼ等に伸ばして貼付します。厚めに塗る方が効果的です。
眼には使用不可。入るとしみます。沢山入れば炎症を起こす恐れがあります。
潰瘍・びらんには使用不可です。

塗る量の目安として、クリームタイプではFTU(Finger Tip Unit)があります。25gチューブを絞り出して、人差し指の先端から第一関節まで薬を乗せた量となります。量としては0.5g程度となり、それを手のひら二枚分の面積に塗り拡げるというものです。診療した中で多くの方は、「結構厚めに塗るんですね」と言われる事が多いです。ローションタイプでは、一円玉の大きさに垂らしたものを、手のひら二枚分に塗り拡げるくらいが推奨されています。

塗る回数は、一日1回よりも2回の方が、保湿効果は高いとされます。経験上、肘や肩甲骨などの擦れる所や、手のように薬剤が流されてしまう所は、それ以上の回数を塗布する事で改善する事が多いです。

5 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)の副作用

頻度不明:刺激感、紫斑
0.1〜5%未満:皮膚炎、かゆみ、赤み、発疹

重大な副作用が出たとの報告は、今の所ありません。
経験上、元々炎症が起きている所にローションやフォームを使用すると、刺激感は出やすい印象です。
ヒルドイド(ヘパリン類似物質)を使用開始した事で異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、医療機関を受診してください。

6 ヒルドイド(ヘパリン類似物質)の禁忌(使ってはいけない方)

出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)のある方。
わずかな出血でも重大な結果を来す事が予想される方。

7 美容目的(小じわ、色素沈着、たるみ)に効果はあるか?

症状や原因によります。
結論から言えば、乾燥による炎症で引き起こされる小ジワ、色素沈着ならば、使用していく事で改善及び予防効果が期待できます。
たるみへの効果は期待できません。
別の要因による皮膚炎が起きている場合、原疾患の治療が必要です。二次的に皮膚のバリア機能が破壊され、角質の水分保持ができないような疾患では、原疾患の治療と併せて使用する事があります。あるいは原疾患が乾燥により悪化する場合も使用する事があります。(アトピーは代表的です)

7-1 小じわへの効果

乾燥肌では角質が堆積しやすく、結果皮膚のターンオーバーが阻害されます。表皮細胞の再生がうまくいかず、小じわの原因となります。
乾燥肌を改善する事で、小じわを改善、予防が期待できます。

7-2 色素沈着への効果

色素沈着はメラニンが角質細胞中に沈着して起こります。乾燥その他による皮膚炎が起こると、表皮内のメラノサイトが紫外線から損傷部位を保護するため、メラニンを生成します。紫外線はDNAを破壊するため、皮膚の再生にはとても有害なものです。ですから色素沈着が乾燥性の皮膚炎に由来しているものであれば、ヒルドイド(ヘパリン類似物質)は原因を治療するので、色素沈着も改善します。
皮膚の炎症を抑えずに色素沈着だけを取り除いても、紫外線による再生阻害を誘発するだけですし、そもそも結果としての色素沈着だけを取り除く事は不可能です。

7-3 たるみへの効果

たるみは真皮のコラーゲン、エラスチン等皮膚組織をつなぐ物質の生成能が低下する事で起こります。外用薬では真皮に届かず、表皮のターンオーバーとともに排出されます。ヘパリン類似物質には皮膚をつなぐ作用はありません。

8 長期使用しても問題ない?

ヒルドイドの長期使用で問題を来たした例は、文献においても経験上もありません。
皮膚の状態が変化した場合、ヒルドイドが効かなくなったり、刺激感が現れる事がありますので、そういった場合は、早めに医療機関を受診してください。
よく経験する例としては、アトピーが急に悪化して、皮膚の表面に細かい傷ができた時は、ローションやフォームなどがしみるようになる事があります。

9 大量処方について

ヒルドイドは美容目的での大量処方が問題になったことがあります。本来美容目的で保険は使えませんし、大量処方は医療費の圧迫につながるからです。そのあおりを受け、現在は保険適用疾患であっても、実質的に処方制限が行われております。「ヒルドイドを一度に沢山処方してくれない」となります。上限は自治体によって異なるのが実情のようです。

9-1 大量に必要な場合は?

自由診療であれば、処方制限に引っかかる事なく、必要十分な量が処方できます。
予約は不要で24時間受け付けております。
※保険適応外となります

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10 費用

保険適用疾患で、ヒルドイド100g処方にかかる費用は
病院にて初診料+処方せん料
薬局にて調剤技術料+薬学管理料+薬剤料
3割負担で合計1,850円ほどかかります。

美容目的の場合は自由診療ですので、医療機関により費用はバラバラです。 医療機関によっては、診察料や薬局での費用をゼロとして、保険を使うよりも安くなる所もあります。

クリニック概要

皮膚科・小児皮膚科・小児科・内科・アレルギー科

綾瀬皮フ科クリニック

〒120-0005
東京都足立区綾瀬2-26-15 第五鳥塚ビル2F

電話番号:03-3690-0148

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